小説2話 推敲

 

6(11月22〜23日) 

ハルは杏子を初めて、過去の友人たちにあわせに行く。(杏子の心の準備ができたとのことで) 

 

杏子ちゃん 

マシュ 

ちゆり 

 

(11月23日) 

放課後、ハルが切り上げようとすると、 

マシュの下校後の予備校へ行くのを見送りたがる杏子 

「好き、だったんだね」とハル 

「そ、そういう好きじゃないって…」杏子ちゃん 

「俺はちゃんと言えなかったから」遠い目をしたハル 

 

 

あるとき、使者としての仕事が空いた時間にハルは、杏子ちゃんにいってみたいところはないか、と聞く。 

「かつての友人や親しい人たちの様子を見に行きたくなったら、いつでも見に行っていいから」といった。 

杏子ちゃんは、その言葉に甘えて、見に行きたいところ、人があるといった。 

そして、ハルと杏子ちゃんは、日中、杏子ちゃんがかつて親しくした人たちの様子を眺めにいくようになった。 

 

杏子ちゃんは友人が多く、クラスのなかでも中心のちかくにいた闊達な子だった。明るく芯が強く、面倒見の良さがある一面のある気丈な娘だった。家族仲も良かった。 

ハルと杏子ちゃんは、使者の仕事の終わりに学校の上を通りかかり、杏子ちゃんがいなくなったあとのクラスメイトや部活仲間の様子を眺めにいくようになった。 

杏子ちゃんは寂しそうではあったが、決まってその場を離れる際は、すこし充足したような表情を見せるので、ハルは少し安堵していた。 

 

もちろん、学校だけではなく、ある日は杏子ちゃんの実家、ある日は商店街、といったふうに、彼女が関わった多様な人間関係を、杏子ちゃんらは隙をみては覗きにいった。杏子ちゃんの交友関係は広く、多くの人から愛されているのが、隣でみていたハルにも伝わった。 

 

杏子ちゃんが様子をみたがるのは、比較的同性の友人が多かったが、ある男の子の様子を眺めていることも多かった。 

彼はマシュ―(matthew)というミドルネームをもった、髪や身体の色素の薄い少年で、休み時間にも分厚い本を読んでいる姿をよく見かけるような落ち着いた雰囲気の小柄な少年だった。 

見入っている杏子ちゃんの横で、ハルはすこしだけ冷やかしたように、そして、本気では冷やかしすぎないように暖かさも残した声で、杏子ちゃんに「好きなの?」と聞いた。 

杏子ちゃんは、そんなことないし、と答えたが。そのはにかんだような表情と血の通った頬で、答えは明白だった。 

ハルはわらった、 

「いいよいいよ、ごめんごめんって、そういうお年頃だったね」 

杏子ちゃんはちょっとむくれた。 

「違うって、ただの幼馴染みだし」 

ハルが意外そうに、幼馴染なんだ、同じ高校なのに。珍しいね。つきあいは長かったの、と聞くと、杏子ちゃんは、うんとうなずいて、地元で小学校が同じで、中学校は別のクラスだったけど、学校は同じ公立で、そこから、すこし口ごもって「受験はたまたま……」と、そこに関してはあまりいいたくなさそうだった。ハルも深くは追求はしなかった。 

そのかわり、ハルは、ひとことだけ付け足して訊いた。 

「ともあれ、大事な人でしょ」 

「うん」 

杏子ちゃんはその点については素直に頷いた。 

ハルはいった、「それが判っているって、大事なことだから」 

「俺は、わからなかったから」「ちゃんと、その人が大事な人だって、ちゃんと、その人がそばに居るうちに、ちゃんと理解できた杏子ちゃんは偉いよ」 

ハルは、自分に対してつぶやくようにいった。 

「俺は、最後までそれが理解(わか)らなくて、(相手に)ひどいことをした」 

杏子ちゃんには聞かせないように小さな声でつぶやいたつもりだったのだろうけれど、残念なことに、杏子ちゃんには、はっきりと聴こえていた。ただ、その意味をするところの内容は、もちろん、杏子ちゃんには、分からない。 

 

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