21 3月1×日 晴れ(卒業式は合格発表のあと)
(杏子の卒業式への感想
杏子の学校の卒業式を、杏子がどうしてもみたいというので、杏子の仕事をハルがなり代わった。
杏子は一人で学校の卒業式を見にいったらしい。そして、アルバムに映る自分のクラスの頁もみたようだ。
当たり前なのだが、杏子の顔写真は、別枠になっていた。死者のように、葬式のように。
仲のいい同性の友人が杏子の大きな写真をもって、集合写真をとった。
杏子は有り難いと思った。ただ同時に、それを自分はいまここに立って、見ているのだと、
次元は違いこそすれ、『今私はここにいるのだ』と、思った。勝手に殺すな、と。亡き者にするな、
思い出にするな、と。
その気遣いに、軽い憤りすら感じた。
どうすることもできないのは、わかっている。